塩気を含んだ温い風が頬を撫でる。
多少軋む見張り台の上で、ラインは空を見上げた。
波の音とカモメたちの鳴き声が心地よく耳に響いてくる。
見渡す限りの大海原。
彼方には水平線と、そして小さな島々が点々と見えるだけ。
「異常なし、っと。見張りって言っても……こんな何もないところだとなー」
一通り確認した後、引き伸ばし式の望遠鏡を畳む。
「交代まであとどれくらいだっけな……」
真上にある太陽を眺め、その眩しさに目を細める。
大きな船を横断するかのように、カモメが数羽、頭上を横切った。
「そういえば、キャプテンと会った日の空もこんなだったっけ」
金の髪を持つ女海賊。
彼女との出会いを思い返しつつ、ラインは眼を瞑った。